要求討議のスタートに位置づけ賃金討論集会を開催

2024年春闘構築にむけて情勢認識を深め
意思統一

要求討議スタート 賃上げの必要性を学び課題を共有し合った賃金討論集会
要求討議スタート 賃上げの必要性を学び課題を共有し合った賃金討論集会

 11月23日、東京で賃金討論集会を開催しました。この集会は、例年、春闘構築のスタートにあたって、とりまく情勢への認識を一致させ、各支部・独立分会が抱える課題を共有し合い、要求討議のスタートの場に位置づけ行なっています。集会には、リモートでの参加者も含めて、全損保各組織の賃金対策部を中心に友好労組である大同火災労組、損保料率機構労組の代表者36名(うちリモート7名)が参加しました。

 長塚本部賃対部副部長(日新支部)の進行で始まった集会は、まず「日本の賃金はなぜ上がらないのか、どうすれば上がるのか」と題し、労働政策研究・研修機構 特任研究員の呉学殊(おうはくすう)さんから講演を受けました。
講演の呉学殊さん(労働政策研究・研修機構 特任研究員)
講演の呉学殊さん
(労働政策研究・研修機構
 特任研究員)

 呉さんは、韓国から1991年に日本に留学し、その後労使関係、労使コミュニケーションを中心に研究されてきました。講演の冒頭当時を振り返り「日本はとても良い豊かな国だと思いました。でも、この30年でそう思えなくなってしまった」とし、バブル崩壊以降、1997年をピークに下がり続ける賃金、2000年以降急激に減り続けている労働争議などにふれ、企業利益が株主配当や内部留保に回り、賃金水準が国際比較で見劣りしている状況について様々な指標から説明しました。そして「賃金は労使対等性が確保されるなかで決定するもの」とし、「労使対等性の原則」が労働基準法、労働契約法、労働組合法のいずれにもうたわれているが、その対等性が稀薄化・形骸化していることが賃金水準の低下を招いているとしました。その要因として、年々すすむ労働組合組織率の低下、労働組合の無い企業における従業員過半数代表制の形骸化をあげ、その結果、交渉の成果が適用される割合(協約率)が、各国では組織率を超え組合員以外にも適用されているのに対し、日本では組織率と協約率は同率で組合員だけに適用されている実態を示し、「日本では、働く者の不平不満は強いが、社内で自由に発言できる環境がなく、交渉力の弱体化・無力化がすすみ労使関係の緊張感が無くなっている」と問題指摘しました。
 そのうえで、「労使コミュニケーション」の重要性について中小企業へのアンケート調査の結果から説明しました。
 アンケートは、社長の労使コミュニケーションに対する基本方針を、A「企業は一般従業員の意向や要望を十分に把握して経営を行うべきだ」、B「経営は経営者が行うもので経営について一般従業員にあえて聞く必要はない」に分け、Aに近い社長を「肯定型」、Bに近い社長を「否定型」として、経営資源性の発揮度を比較しています。経営危機の克服状況では、「経営危機が悪化している」が「肯定型」4.1%、「否定型」21.2%、「職場の雰囲気」では、「社員がいきいきと働いている」が「肯定型」79.7%、「否定型」67.2%、「過去5年間の自己都合退職率」では、「肯定型」2.9%、「否定型」12.6%などのデータから「肯定型」の企業では、労使コミュニケーションの基本要件である、社長の決断、経営情報の完全公開、権限移譲、相互尊重、相互信頼が高くなり、生産性が上がっていることを明らかにしました。
 そして、韓国で30人以上の企業・事業所に義務付けられている「勤労者参与および協力増進に関する法律」(勤参法)の導入による効果として、「企業経営の透明性」、「労働者の参加性」、「労働者の主体性」、「労働者の納得性」の「4つの性」が確保され、緊張感のある労使関係が築かれていることによって企業の生産性が向上し賃金を引き上げていると紹介しました。
 結論として、@労使関係の対等性が確保されていない、A労働組合の集団力の低発揮、によって日本の賃金が上がっていないことから、労使関係の対等性を確保することで日本の賃金は上がっていくとし、@労働組合の組織化・組織拡大、労働協約の拡張適用の拡大、A労働組合の労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)のフル行使、B従業員代表制の法制化(例:韓国の勤参法)・労使コミュニケーションの経営資源性の発揮、C雇用関係の高度化(労働者の主体性の発揮、創意工夫、高いモチベーションなど)が求められているとしました。
 最後に、要求討議をスタートする全損保に対し、「全労働者の賃金を1%上げることで生産額は約2.2兆円上がることになります。今、『労働組合がんばれ』とエールを送られている国は日本しかありません。春闘では真の意味で労使対等を土台に賃上げを勝ちとってください」とエールを送りました。講演後の質疑では、日本と韓国の企業経営の違い、韓国の労働組合のたたかいなどについても認識を深めました。

提起する西田賃対部長
提起する
西田賃対部長


 続いて、西田本部賃対部長(共栄支部)が「2024年春闘構築に向けて、要求討議のすすめ方」を提起しました。そのなかで、実質賃金が下がり続けているなか、23年ぶりに全損保統一基準に要求水準を明示し、各支部・独立分会の努力で築いた2023年春闘の成果と到達点を確認しました。2024年春闘構築に向けては、「大手3グループの中間決算は増益となり、通期見通しでは過去最高益を見通しているが、保険料の事前調整やビッグモーター問題の影響は不透明となっている。一方で、組合員の生活は物価高騰などで厳しくなっており、不満や不安は強まり、賃上げへの思いは強くなっていることから、経営の厳しい出方と強い要求がぶつかり合いせめぎ合う春闘となる。後ほどの分散会ではこれまでの到達点や教訓を確認し合い、全損保統一闘争への認識一致をはかって欲しい」と積極的な討論を呼びかけました。
 引き続き、共栄支部、日新支部、セコム損保支部、楽天損保支部から、2023年春闘の経過と到達点、12月臨給闘争、2024年春闘にむけた課題や職場状況、その背景にある経営政策が報告されました。

山本さん(共栄支部) 長塚さん(日新支部) 城田さん(セコム損保支部) 鈴木さん(楽天損保支部)
山本さん
(共栄支部)

長塚さん
(日新支部)

城田さん
(セコム損保支部)

鈴木さん
(楽天損保支部)

 その後、2班に分かれて分散会が行われました。分散会では、講演を受けての感想と全体情勢に対する意見を出し合ったうえで、各社の経営政策や職場における問題点、これまでの春闘や各種制度改定におけるとりくみなどに関し、率直に意見や悩みが出され、情報の共有がはかられました。

閉会のあいさつ:藤野賃対部副部長
閉会のあいさつ
藤野賃対部副部長

 分散会終了後、まとめの全体会が行われ、友好労組からあいさつを受けました。最後に、藤野本部賃対部副部長(楽天損保支部)が閉会のあいさつに立ち、「講演、本部賃対部提起、各支部報告、分散会論議で、情勢認識や職場の課題が共有され、2023年春闘の成果と課題があらためて認識されたと思う。2024年春闘も賃上げを求めていくが、情勢は厳しくたたかいも厳しくなることが予想されている、講演で賃上げにむけてどうしていくべきなのかを学ぶことができた。そして、企業をこえて損保に働く仲間が結集できる全損保の良さも認識し合えた。一人ひとりが確信の持てる要求づくりとなるよう一致団結して頑張っていこう」と2024年春闘討議のスタートを呼びかけ賃金討論集会を閉会しました。




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