要求討議のスタートに位置づけ賃金討論集会を開催

2019年春闘構築にむけて意思統一


2019年春闘構築スタートに位置付けた賃金討論集会
2019年春闘構築スタートに位置付けた賃金討論集会


 11月17日、東京で賃金討論集会を開催しました。この集会は、例年、春闘のスタートにあたって、とりまく情勢への認識を一致させ、各支部・独立分会が抱える課題を共有し合い、春闘構築のスタートの場に位置づけおこなっています。集会には、全損保各組織の賃金対策部を中心に友好労組である大同火災労組の代表者も含め24名の組合役員が参加しました。

講演の金田豊氏
講演の金田豊氏

 及川本部副書記長の進行で始まった集会は、まず「日本における人事制度と賃金体系の変遷と現状」と題し、労働運動総合研究所理事である金田豊氏から講演を受けました。
 講演では、まず日本における人事制度と賃金体系の現状について、財界・政府が狙う改革の方向も含めて説明がありました。そのなかで、安倍政権は日本再興戦略の中心に生産性の向上をおき、財界が求める“労務コスト削減で利益が上がる仕組み”となるための環境づくりを「働き方改革」でめざしていると説明しました。具体的には、“働いた時間ではなく成果による処遇へ”、“終身雇用の重視から労働移動重視へ”、“自己責任と人事評価制度の強化へ”、“正社員の多様化と非正規・正規の雇用区別の統合へ”との考えのもと、労働生産性の向上をめざしており、高齢者や女性を労働市場へ導入することで少子高齢化による労働力の不足を補おうとしていると解説しました。しかし現状では、各企業の基本給の決定要素は、年齢、勤続年数などの年功的な要素が6割を超えていることをあげ、「必ずしも政府・財界の方針通りにはすすんでおらず、矛盾に直面している」と指摘しました。また、現状の問題点については、@成果主義賃金制度の導入と人事評価制度の強化によって賃金格差と低賃金層が増大していること、A制度の部分的手直しや賃金項目の構成組み換えによって賃金体系が複雑化していること、B定年延長や再雇用者の活用による低賃金労働力が増加していることなどあげました。
 こうした現状に至る人事制度・賃金体系の変遷について、政府・財界が示してきた方針も含めて説明し、経営側がすすめてきたこととして「人事評価を握り昇格・昇給を支配し、競争をあおることで労働者の団結破壊による賃金抑制をすすめた」としました。これに対し、労働者側は「効果査定を否定し、昇給格差を抑え、生計費を充足する水準を求めてたたかってきた」と労使のせめぎあいの歴史を説明しました。そのうえで、労働組合に求められる人事制度・賃金体系に対する基本的な対応として、@個別賃金を労働組合が掌握でき、労働者がお互いに賃金を交流でき納得できる体系を追求すること、A生計費原則に基づき、人間らしい生活が充足される賃金を追求すること、B差別を排除した公平・公正な賃金であること、C雇用形態による処遇や賃金の格差を規制すること、をあげたうえで、「労働者が自由にモノを言える場をつくり団結強化をはかることで要求することが大事になる」と労働組合の団結強化によって経営の狙いを排除していくことを呼びかけました。

提起する西田賃対部長
提起する西田賃対部長

 続いて、西田本部賃対部長(共栄支部)が「2019年春闘構築に向けて、要求討議のすすめ方」を提起しました。そのなかで、各支部・独立分会の努力で築いた2018年春闘の成果と到達点を確認しました。2019年春闘構築に向けては、「損保では、業績は拡大しているが、産業のありようが不透明であり、経営は環境がどのように変化しても生産性の向上と収益の拡大がはかれる体制を求めている。そうしたなか、大規模自然災害も多発しており、年度決算は下振れすることから、春闘においては経営の厳しい出方が想定されている。一方で、頑張りが求められている職場の不満、期待、要求は強まっており、経営の厳しい出方と強い要求がぶつかり合う春闘となる。後ほどの分散会ではこれまでの到達点や教訓を確認し合い、全損保統一闘争への認識一致をはかって欲しい」と積極的な討論を呼びかけました。
大島さん(共栄支部) 長塚さん(日新支部) 宮里さん(大同労組)
左から 大島さん(共栄支部)、長塚さん(日新支部)、宮里さん(大同労組)

 引き続き、共栄支部、日新支部、大同労組から2019年春闘にむけた課題や職場状況、その背景にある経営政策が報告されました。
 その後、2班に分かれて分散会がおこなわれました。分散会では、講演を受けての感想と全体情勢に対する意見を出し合ったうえで、各社の経営政策や職場における問題点、これまでの春闘や人事制度改定におけるとりくみなどに関し、率直に悩みや意見が出され、情報の共有がはかられました。

閉会の佐藤賃対部副部長
閉会の佐藤賃対部副部長

 分散会終了後、まとめの全体会が行われ、友好労組からあいさつを受けました。
 最後に、佐藤本部賃対部副部長(損保ジャパン支部)が閉会のあいさつに立ち、「講演では、成果主義の導入・拡大に対し、職場の声を力にすべての運動をすすめてきた全損保に対し、声をあげさせず分断する経営との対立が思い起こされた。また、分散会では様々な意見交換がされ、情報も共有できたと思う。2019年春闘も、働くものの生活と雇用、労働条件を守り、声と実態を主張することで産業、職場、生活を良くしていくスタンスは何ら変わらない。友好労組とも情報を交換しながら、要求が実現できる春闘をめざして今日をスタートに全損保統一の春闘を構築していこう」と2019年春闘構築のスタートを呼びかけ、賃金討論集会を閉会しました。

このページのTOPへ