春闘宣言 |
世界経済は、物価上昇の落ち着きと政策金利の引き下げによる景気回復が期待されていますが、解決が見通せないウクライナ危機や中東情勢、アメリカトランプ政権による関税の引上げ、各国での「自国第一主義」への回帰など、様々なリスクを抱え予断を許しません。 日本では、歴史的な円安とインバウンドの増大を追い風に大企業業績は好調に推移し、内部留保は550兆円をこえ過去最高を記録しています。一方で、2020年からの5年間で9%以上上昇している物価高は、国民・労働者の生活をますます厳しくさせています。昨春闘では数十年ぶりの賃上げと報じられましたが、莫大な利益をあげる大企業の労働分配率は下がり続け労働者の期待に応えていません。実質賃金は賞与効果のあった月を除いてマイナスが続き、厳しい生活を強いられる国民の個人消費は伸び悩んでいます。また、物価上昇を価格に転嫁しづらい中小零細企業の経営も圧迫されており、国民・労働者にはかつてない将来不安が広がっています。 こうしたなか政府がすすめる政策は、防衛費を倍増させるための大増税を検討する一方で、国民生活を救うための財政支出は少なく抑えられ、不安を払拭するものとはなっていません。そして、「政治とカネ」の問題では、国民が納得する十分な説明もなく、説明責任を果たさない政権与党の姿勢が厳しく問われており、今後の国会審議には注視が必要となっています。 春闘にむけては、石破首相が「高水準の賃上げとなった昨春闘の勢いで大幅な賃上げの協力をお願いする。雇用の7割を占める中小企業や地方にも行きわたることが重要」だとして、昨春闘を上回る水準の賃上げを財界に求めています。これに対し経団連も、「物価に負けない賃上げを実現し定着させたい」、「ベースアップを意識して賃上げしようと呼びかけていく」としており、多くの経営者がベースアップを含む賃上げに意欲をみせています。 損保では、大手社において政策株式の売却益が利益水準を大きく押し上げていますが、本業の業績は思うように伸びていません。加えて、既存市場の縮小、ビジネスモデルの変化、停滞する経済情勢など多岐にわたる課題が存在し、そのすべての対応に一層のスピードが求められることから、経営の危機感はさらに強まっています。そのもとで、大手グループ経営は、金融庁の指導もあり、これまでのマーケットシェアを重視した政策の見直しを迫られていますが、中小社も含めて職場に歪みをふりまきながら「収益の拡大」を求めていることから、各社の政策すべてが「収益力の強化」をめざしたものとなっています。こうした政策と自社利益を優先し消費者を軽視する姿勢、長年の商慣習などが、「保険料の事前調整」など一連の不祥事を引き起こし、補償機能の発揮という損保産業の社会的な信頼を損なう事態となっています。こうしたなか損保の職場には多様な「歪み」がふりまかれ、働く仲間の雇用や生活、権利、労働条件が脅かされています。「歪み」が押しつけられる職場には、その矛盾に悩み、心身ともに疲弊する実態があります。そして、将来や雇用、生活や処遇、賃金や働き方等に対して、不満や不安が広がり大きくなっています。私たちがとりくんだアンケートには、数多くの「何とかしてほしい」という厳しい現実、切実な実態と強い思いや声が訴えられ、物価上昇に負けない賃上げを柱とする“要求”がかつてなく強まり大きくなっていることも明らかとなりました。一方、経営にとっても、自らが進める政策を実現するためには、労働者の主張には真摯に耳を傾けざるを得ないことに変わりはありません。 私たちは、2025年春闘を、「賃上げを礎に 職場の歪みを正し 生活を立て直す」としたスローガンのもと、○雇用と人間らしく働ける職場を守る、○産業の社会的役割を守る、○人間を大切にする労働組合として奮闘する、の3本を柱にたたかいます。いま最も求められる生活を立て直すための賃上げをはじめとした要求と課題を掲げ、その実現にむけて組合員の力を結集し、全損保統一闘争のもと、知恵と工夫で主張と団結を強め、確信をもって春闘をたたかいます。 本日確立された春闘方針のもと、明日一斉に要求書を提出し、諸要求実現のため、職場で、地域で、機関と職場が一体となって2025年春闘勝利にむけたたかうことをここに宣言します。 |
2025年3月12日 全損保第91回定期全国大会 |
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