春闘宣言 |
ウクライナ危機による穀物やエネルギーの供給不足と物流の滞りは長期化し、世界各国での物価高は続き、市民生活に影響を与えています。加えて、4年に及んだコロナ禍からの景気回復は思うようにすすまず、世界経済の成長率は3年連続で下降する見通しとなるなど、その先行きは混沌としています。 日本では、大企業の経常利益が過去最高を記録し、内部留保は増え続けていますが、その利益は働く者に回らず、労働分配率は過去50年で最低水準となっています。歴史的な物価高は長期化し、昨春闘における賃上げがあってもなお実質賃金は2年連続で減り続け、厳しい生活を強いられる国民の個人消費は伸び悩んでいます。また、物価上昇を価格に転嫁しづらい中小零細企業の経営も圧迫されており、国民・労働者にはかつてない将来不安が広がっています。 こうしたなか政府がすすめる政策は、防衛費を倍増させるための大増税を検討する一方で、国民生活を救うための財政支出は少なく抑えられ、不安を払拭するものとはなっていません。そして、一気に噴出した「政治とカネ」の問題では、国民が納得する十分な説明もなく、説明責任を果たさない政権与党の姿勢が厳しく問われ、内閣支持率は急落し、国民の不信を増大させています。 春闘にむけて岸田首相は、「デフレ完全脱却のチャンス」をつかみとるためとして、昨春闘を上回る水準の賃上げを財界に求めています。これに対し経団連も、「賃金が継続して上がっていく構造的な賃上げが責務」だとして、ベースアップを有力な選択肢として検討するよう会員企業に呼びかけており、大手経営者もその多くがベースアップを含む賃上げに意欲をみせています。 損保では、企業規模の大小を問わず、既存市場の縮小、大規模自然災害の発生懸念など、これまで経営が注視していた要因に加え、不透明なコロナ禍の動向やウクライナ危機の長期化による経済停滞、スピードが求められるデジタル化への対応といった従来とは違った課題も抱え、事業環境の先行きに対し各経営の危機感はさらに強まっています。そのもとで、大手グループ経営は、国内での徹底した顧客囲い込みを通じてマーケットシェアを競い合い、海外事業や新規事業領域の推進も含めて収益拡大をめざしており、中小社もこうした競争に巻き込まれていることから、各社の政策すべてが「収益力の強化」をめざしたものとなっています。こうした行き過ぎた姿勢が、「保険料調整」、「保険金不正請求」にかかわる一連の不祥事を引き起こし、補償機能の発揮という損保産業の社会的な信頼を損なう事態となっています。収益を重視し、「合理化・効率化」、労働生産性を追求する具体政策がすすめられていく過程で、損保の職場には多様な「歪み」がふりまかれ、働く仲間の雇用や生活、権利、労働条件が脅かされています。こうした「歪み」が押しつけられる職場には、その矛盾に悩み、心身ともに疲弊する実態があります。そして、将来や雇用、生活や処遇、賃金や働き方等に対して、不満や不安が広がり大きくなっています。私たちがとりくんだアンケートには、数多くの「何とかしてほしい」という一層深まる厳しい現実、大変切実な実態、非常に強い思いや声が訴えられ、物価上昇に負けない賃上げを柱とする“要求”がかつてなく強まり大きくなっていることが明らかとなりました。そして、経営にとっても、政策実現をめざすうえで、そうした労働者の主張には真摯に耳を傾けざるを得ないことに変わりはありません。 私たちは、2024年春闘を、「いっそうの賃上げ 傷む賃金を正し、苦しさ増す生活を直す ともに確信をもってたたかう」としたスローガンのもと、○雇用と人間らしく働ける職場を守る、○産業の社会的役割を守る、○人間を大切にする労働組合として奮闘する、の3本を柱にたたかいます。いま最も求められる生活を改善するための賃上げをはじめとした要求と課題を掲げ、その実現にむけて組合員の力を結集し、全損保統一闘争のもと、知恵と工夫で主張と団結を強め、確信をもって春闘をたたかいます。 本日確立された春闘方針のもと、明日一斉に要求書を提出し、諸要求実現のため、職場で、地域で、機関と職場が一体となって2024年春闘勝利にむけたたかうことをここに宣言します。 |
2024年3月13日 全損保第89回定期全国大会 |
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