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全損保結成60周年 記念シンポジウム 2009年11月12日 於)星陵会館
日動外勤のたたかい
10年の締めくくりの勝利を
吉田  ありがとうございました。それでは、パネリストの方々に一言ずついただいて、まとめにしたいと思います。それでは加藤先生からお願いします。

加藤
弁護士
 今、労働組合の必要性が本当にどこでもいわれるようになりました。労働組合の組織率が20%を切ってからかなり経ちます。しかし、去年の暮れから起きている派遣切り等の事態を見ても、労働者が抵抗する権利自体はある。労働基本権は憲法で保障され、労働組合もあるし、つくる権利もあるのです。ところが、単純に労働者の責任ではなく、そうさせている経営者の方に主要な問題があることはいうまでもありませんが、労働者の人たちがなかなかその権利を行使できない状態が残念ながら続いています。実際に未組織でいる人たちは、労働組合が一般的には必要だと思うし、欲しいと思うのですが、そのときに、実例になるような「こういう運動がある」、「こういう組合がある」というものをできるだけ見せていく必要があると思います。そういう意味で、全損保という現に産業別の組合があるということ自体が非常に重要なことですし、こういう活動もあるということを、できるだけ多く知らせていくような存在になっていただきたいということが一つあります。
 先程、組織問題の話題がありました。私も、ある支部が「脱退」を決める最後の支部大会に、本部と一緒に来賓で呼ばれたことがありました。呼ぶ方も呼ぶ方、いく方も何をしゃべるのかということなのですが、全損保はいい組合だという話をしました。そういう経験もして思うことは、全損保から離れた方、他の労組にもともといる方からも全損保が嫌われているわけでなくて、注目されているのだろうということです。この損保業界で、全損保がどんな活動をしているか、どんな主張をしているか、みんな注目をしているし、気にもなります。だいたい、一つで大きい方がいいっていうわけではないということは、具体的事実に即していえば明らかになっているわけです。やっぱり労働組合というのは、労働者が主人公で労働者の権利を守るためにあるという、当たり前のことですが、これを日々実践しているということを誇りに思っていただきたいと思います。
 それから最後に、日動外勤の問題です。高裁で和解の詰めをやっています。千名の外勤社員を切り捨てる。その前に全損保の分裂策動をやった。そのとき、唱えられたのは、全損保にいたら外勤として残れないよということですが、合併して、舌の根も乾かぬうちに、「もう外勤社員はいりません」と切り捨てる。こんなことを、天下のリーディングカンパニーがやっている。こういうことは許されないということについて、損保業界だけでなくて、社会的に示しをつけなければいけないと私は個人的に思います。
 日動外勤のたたかいは、裁判でも勝って、経営者を追いつめつつあります。ただ追いつめつつある段階ですから、ぜひ追いつめ切って勝利をする。そのことによって、全損保全体のたたかいの一つの成果になる局面を迎えつつあると思っているわけです。こういう局面にもってこられたのは、全損保全体が総力を挙げて支援してきたということと、日動外勤の仲間の人たちがこれは裁判内外を問わず自分たちの仕事に対する誇り、あるいは労働者としてのプライドをかけてそれを率直に訴えて共感を広げてきたからです。
 日動外勤の人、ちょっと立っていただけませんか。(日動外勤の仲間立つ。拍手)。ぜひ、日動外勤の解決をもってこの10年の締めくくりができるような、そういうことを期待して私からの発言を終わります。頑張りましょう。

人間を大切に、人間にやさしくする感覚
DNAもった仲間に確信を
吉田  では加藤さんお願いします。

加藤寛  専従から職場に戻り、はたから見れば、自分のいた支部が少数支部になり、厳しい会社にいて、とても大変ではないかという印象があるかもしれません。もちろん、大変なことも多いとも思うのですが、全損保にいるということが、私には、大変居心地がいいのです。少数だから差別をされるという面は否定できないし、あるのだろうと思います。しかし、私が働く会社に限らず、いまは、出身会社や、労組の違いなどというより、全体で差別の構造を多分につくりながら、排除する人は排除するということをやっているのであって、全損保にいるから、いないからということについて、私自身が差別されているという感覚が少なくとも職場のなかではありません。むしろ全損保だから、物が言える、そのことにいま居心地のよさを感じています。
 この10年を振り返ってみて、「たたかえば展望がある」とか、「たたかいこそ展望」みたいなキャッチフレーズをよく労働組合が使います。私も、多分気軽に言っていたと思うのですが、その自分が大変恥ずかしくなったというのが第一のたたかいです。展望なんか、たたかってもたたかっても見えてきませんでした。だけど、みんなで体を張ってとにかく一生懸命頑張るってことしかなかったのです。「希望を持つには悪いやつが多すぎる。しかし絶望するにはいい人たちが多すぎる」。これはある舞台でのせりふですが今はとても共感できます。3月の最後に両支部の2役・執行部と酒を飲んだとき、彼らは「成果は大したことはないかもしれないけど、自分たちはできることをやりきった。だから悔いはないし納得しています」と言ってくれたんです。たたかうっていうことはそういうことだということを、第一の仲間には教えられたと思っています。
 ただ、一番悔しいと思うことは、第一も第一外勤もTISもR&Sも、そして書記の仲間も、いちばん全損保の値打ちを理解してくれている仲間が真っ先に全損保から去らなければいけなかったことです。この10年どれだけの人が職場を去ったのか、全損保から切り離されたのか、そのことは忘れてはならないと思います。しかし片方では、全損保の組合員が減った、小さくなったと言ったって、そのことだけにあまり一喜一憂する必要もないと思います。なぜなら、全損保のDNAを持っている損保従業員が、実はこの業界のあちこちにいるというのも間違いのない事実だからです。では、DNAって何だといえば、「全損保らしさ」ということになりますが、それぞれ言い方が違うのですが、私は普通に人間の感覚で「仲間を大事にしようとか、優しくしようとか、人間を大切にしよう」ということではないかと思います。これは職場で一緒に働いていてとても大事なことだと思うのです。それがあるかないか、そういう仲間が一人でもいるのかいないのかで、その職場は大きく変わるというふうに思います。合併した会社も、そのDNAをもった仲間が混在したことで、新しい会社になっていると私は思います。
 職場にはそういう一人ひとりがいることに確信を持って、声を出し続け、たたかいを続けるということでいろんな可能性があると思います。その証拠に、日動外勤のたたかいのような、いままた、全損保の歴史に残るようなたたかいができている。そのたたかいができている全損保がここにあるというのは、まだまだいろんな可能性があるということだと思います。引き続き、一緒に頑張りましょう。

集まる力、話し合う力、広げる力を
よさをいつも伝え、教えなければ
吉田  それでは瀧さん、お願いします。

 私自身の争議のことを少しだけお話します。中央労働委員会の労働者委員は、公の場ではありませんが、「瀧さん、単産の委員長に対する攻撃はそれだけで不当労働行為なのです」と言われました。それほどまでに勝って当たり前のたたかいなのですが、「ああ気分が晴れないな」と思っていました。
 たたかいの当事者というのは、今は日動外勤のメンバーがそうですが、大変なのです。なぜかというと、最も鋭利な攻撃を正面から受け止めて組織を代弁してたたかっているからです。労使の双方から注目される位置に置かれているので気が抜けません。頑張り続けなければいけない。支えるたたかいも大きくなる。よし頑張ろうと仲間の前で決意表明するような場面が続きますが、できることならば、そこから早く降りたいという気持ちは、当事者には大なり小なりあると思います。
 争議の当事者というのは、私たちの仕事に例えると、とんでもなく大きな事故に巻き込まれた契約者みたいなものです。損保会社はその契約者を支えるために力を注ぎます。労働組合も同じように、組織の前面に立って一生懸命たたかっている当事者を全力で支援してたたかう、これは当たり前のことです。言いたいのは、その姿を加害者、私たちの場合は常に経営者ですが、その経営者に見せつけることができるからこそ、「いつか何かあったら私を守ってくれる」と、多くの組合員から信頼される労働組合であることができるのです。全損保の値打ち・値打ちとよく言います。誤解を恐れずに言うと、全損保の値打ちというのは、今日、皆さんが話しをされたような側面はありますが、それ以上に経営者が、「ああ全損保なのだ」と感じる、感じ取らせることが大事だと私は思っています。経営者に、「うちの組合員はいい保険を付けているな」と思わせたら私たちの勝ちです。勝ちの道が広がっていると確信しています。
 この良さを役立てるということでは、持論を言います。「労働組合は、集まる力・話し合う力・広げる力」、この三つが大切です。事故経験が全くない契約者に保険のありがたさ、保険会社のありがたさを分かってもらうことはなかなか大変ですが、同じように組合員に対して、「あなたも攻撃を受けたらわかるから」というような乱暴な説明はできません。こんなに素晴らしい労働組合でも、その良さ、活動の中身を語り伝えなければいけません。今日もその一日だと思っています。せっかくこうして集まったわけですから、分会委員会であるとか、地協の幹事会であるとか、女性のつどいの実行委員会であるとか、支部執行委員会であるとか、そうしたところでじっくり話をして広げていっていただきたいと思います。ただ集まるだけなら並の機関役員です。組織に持ち帰って、今日聞いた話をどう仲間に広げていこうかと話し合う、ここまでできたら一流の一歩手前です。話し合うだけでなく、運動方針の徹底、組合員教育、組織の強化などに役立てる、これができてこそ全損保の機関役員です。私もみなさんと同じように頑張っていきたい、その気持ちを申し上げて締めくくりの言葉といたします。ありがとうございました。





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