春闘宣言

 これまで高成長を遂げてきた中国経済の減速が顕著となり、長引く欧州経済の低迷に加え、アメリカの金利政策転換も相まって、新興国経済の成長が鈍化するなど、世界経済は不安定で、その先行きの不透明さを増しています。日本では、異次元の金融緩和による円安・株高によって、製造業を中心とした大企業は、業績を伸ばし利益をあげています。しかし、その利益は内部留保のさらなる蓄積と海外事業への投資に使われ、実体経済を回復させる投資にまわっていません。その一方で、多くの中小企業、国民・労働者にとっては、原材料価格や物価の上昇が、負担増となっています。

 そうしたなか、年初来、原油安などによって、世界的な株安となり、株価は19,000円から16,000円まで下落し、円相場は120円台から110円台半ばまで円高になりました。これを受け日銀は、1月末、マイナス金利の導入に踏み切りましたが、その効果は未知数であり、副作用への懸念も指摘されています。

 こうしたなか、自らの経済政策を押し通そうとする政府は、財界に対し3年連続となる「賃上げ」を要請しています。これに対し財界はそれに応える形で「年収ベースでの引き上げ」を呼びかけていますが、各企業は、世界経済の不透明さを強調し、資本の溜め込みを継続させ、法人税の減税と労働分野の規制緩和を強く求めるなど、過去2年と違い「ベースアップ」には否定的な姿勢をとっています。しかし、このような国民・労働者に犠牲を強いる経済政策や「企業利益優先」の財界の姿勢に対する国民・労働者の怒りは高まっています。

 損保各社は、多くの会社が過去最高益を計上した昨年度に比べれば利益は縮小するものの、自動車保険の収支改善を中心として業績は好調に推移し、通期決算でも一定規模の黒字を確保する見通しとなっています。それでもなお、国内市場の縮小、多発する自然災害、消費税増税など、将来に向けた事業環境が不透明なことから、各経営はその危機感や焦燥感を依然として強めています。そして、安定的な利益の確保に向けては「道半ば」として、「収益力の強化」と「合理化・効率化」の手を緩めていません。そのもとで、事業再編や統合・合併、希望退職募集や「働き方改革」を具体化させながら、事業費削減をおしすすめています。そうした会社政策の歪みや矛盾は、すべての損保労働者に押しつけられ、生活や労働条件を脅かし、働きがいと産業の社会的役割の喪失を生んでいます。

 こうした実態に対して、職場では、不安や不満、疑問や怒りの声が数多く出され、処遇、労働条件を「一歩でも改善してほしい」という切実な思いとともに、賃金水準の引き上げへの期待は高まっています。一方経営も、政策実現をめざすうえで、労働者の真摯な主張には耳を傾けざるを得なくなっています。

 私たちは、このような情勢と職場の現実を直視し、2016年春闘を、「確信と展望 全損保統一闘争のもと、職場からいまをただし、共感を広げたたかう」というスローガンのもと、○雇用と人間らしく働ける職場を守る、○産業の社会的役割を守る、○人間を大切にする労働組合として奮闘する、の3本を柱にたたかいます。支部・独立分会は、「賃金水準の引き上げ」を柱とした、いま最も求められる要求と課題を掲げ、全損保統一闘争のもとで、その実現のために全力でたたかいます。そのために「交流・共同の場」を一つでも多く築き、地域の仲間が「集まって、語り合って、励まし合う」とりくみをすすめます。また、国民的課題にも視野を広げ、多くの労働者と連帯し、平和で民主的に暮らせる国をめざしたとりくみをすすめます。  本日確立された春闘方針のもと、諸要求・諸課題実現のため、職場で、地域で、機関と職場が一体となって2016年春闘勝利にむけたたかうことをここに宣言します。


2016年3月16日
全損保第73回定期全国大会



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