日動外勤のたたかいの解決にあたって
2010年2月3日
全日本損害保険労働組合中央執行委員会
1. 2010年2月3日、東京高等裁判所第5民事部において和解が成立した。この和解をもって、2004年5月の全損保日動外勤支部分裂以降の不当労働行為事件もあわせ、2005年10月に会社から「通知・提案」された外勤社員制度(RA制度)廃止事件は、細部の労使交渉を残し、解決する。

2. 本和解は、形の上では、RA制度廃止を認めるものであるが、会社出資の「専門代理店」の設立と存続、賃金制度移行にあたって不利益を是正する各種経過措置、適正な人事制度の適用、保有契約の承継などを通じて、裁判をたたかった41名(和解時点の原審原告数)が、正社員として定年退職まで保険募集に専門に従事し、退職後も代理店として保険募集を行っていく条件を整備させるものとなっている。この到達点は、生涯にわたって誇りをもって保険募集を続けるという、本人たちの根源的な要求を会社に受け入れさせたものといってよい。

3. この到達点を切りひらいた力は、何よりも全損保日動外勤支部組合員のたたかいにある。彼らは、普段は、自らのスタイルや思いにこだわり保険募集をすすめながらも、日動外勤支部を通じた団結を何よりも大切にし、武骨ではあっても、この支部にしかできないたたかいを形にした。
 たたかいは、社会にこの問題を伝え、経営者を世論で包囲するなかで、解決を決断させることをめざした。2007年4月には、「手渡し&ポスティングビラ」のとりくみをスタートし、休日を利用し、全損保組合員や転進した仲間も支える中で、一枚でも多くのビラを届けようと全力をあげた。東京では23区全域への配布が目標とされ、毎年、「全損保一斉行動日」も設定された。その結果、累計で516万枚以上のビラを配布するという近年の労働運動では異例の峰を築き、社会的な反響はかつてなく広がった。また、本人たちの肉声を裁判所に直接伝えるため、全員が、保険募集にかけた思い、制度廃止へのくやしさをぶつけた3度にわたる陳述書、本人・家族の肉筆の手紙を裁判所に提出した。また、本人たちは勿論、全損保内外の仲間、友人・知人などから、東京地裁・高裁裁判長あての「手書き要請ハガキ」が一枚一枚積み重ねられ、最後には20000枚に達した。本人と仲間の願いを込めたはがきが、毎日10枚以上、直接裁判長に届けられたことになる。日産センリュリー証券不当労働行為事件、AIGスター生命嘱託社員雇止め解雇事件とともにたたかった「金融3争議共同行動」は、「株主総会総行動」、半日・終日の「要請待機行動(座り込み)」、丸の内デモも含め、毎月、計32回の本社前行動を続けた。毎年6月の東京海上ホールディングス株主総会では、このたたかいの要求だけでなく、「不払い・取りすぎ問題」や募集網の効率化政策に関わる経営責任も追及し、参加した他の株主、代理店にも共感を広げていった。
 このようなたたかいを通じて世論が大きく広がるなか、昨年6月の株主総会では、社長をして「最終段階であり、踏み込んで解決する」と言わしめ、2・5東京海上日動包囲終日行動をかつてない規模で構える中で、この和解は解決に向かったのである。

4. この運動が、9名の弁護団の献身的な努力と結びつき、裁判闘争も攻勢的にすすめられた。2007年3月、私たちは、RA制度廃止を事前に差し止める画期的な東京地方裁判所判決を手にした。経営者は、判決に従わなかったが、「経過措置適用者」という対応をするほかなく、本人たちは、外勤社員として働きながらたたかうことが可能となった。この判決を土台に東京高等裁判所の審理はすすめられ、本人たちの陳述書に加え、本間照光氏、山口孝氏の尽力による鑑定書も得て、経営者の攻撃の不当性は明らかにされ、本人たちの切実な要求は正面から裁判官に伝えられた。また、東京都労働委員会、中央労働委員会においては、RA制度廃止問題と密接に関連しながら手続きがすすめられ、重ねて不当労働行為救済命令が下された。これらが一体の力となって和解協議はすすめられた。

5. この結果は、再編「合理化」情勢が再び深まる損保産業において、経営者が、「経済合理性」を尺度に、従業員に犠牲を転嫁し、一方的に効率化をおしすすめることを厳しく戒めるものとなっている。募集網の効率化競争にも一石を投じ、とりわけ、確定される東京地裁判決に象徴されるように、安易な外勤社員制度廃止は断じて許されないということを明確にしたことは極めて重要な成果である。また、新自由主義が反省され、今後の政治や経済のありかたをめぐるせめぎあいが続くこの国の現状をみるとき、このたたかいが、国民・労働者が大切にされる時代を築くための1歩となっていることにも確信を持ちたい。

6. 以上のたたかいは、本人たちだけでなく、制度廃止の中で代理店に転進していった仲間、全損保各支部・地協の多くの組合員が自分たちのたたかいとして結集し、国民春闘共闘、全国金融共闘などのたたかう仲間に大きな支援の輪が広がる中で前進した。本人たちは、その支援を背に、新たな人生に船出していくことになる。支援をしていただいたすべての方々に心から感謝を述べるとともに、本人たちには、このたたかいを力に保険募集の仕事を全うできるよう、さらなる団結と奮闘を求め、「日動外勤のたたかい」を、結成60周年を迎えた全損保の歴史に新たに刻みたい。

以 上



このページのTOPへ