最初に"首切りありき"は許されない
ロイヤル・アンド・サンアライアンス・グループの日本における事業のAIGグループへの売却について

<経過>
 11月11日、ロイヤル・アンド・サンアライアンス・グループ(RSAグループ・ロンドン)は、日本における事業をAIGグループに売却し、すべての従業員の雇用を承継しないことを明らかにした。日本での事業は、グループ傘下のロイヤル・サンアライアンス保険会社(RSAI)とロンドン保険会社(TLA・保険通販)それぞれの日本支店と事務サービス会社であるアールエスエイサービシズ(RSAS)で構成され、計207名が働いている。両社が保有するすべての保険契約がAIGグループ傘下のAIU保険会社、アメリカンホーム保険会社それぞれの日本支社に包括移転される。法的な手続は、2005年第1四半期(2月末ないし3月末)までに完了すると説明されている。

<「事業売却」をどうみるか>
(1)「資本の論理」むきだしの事業売却
 この事業売却は、世界的な事業再編を通じて収益性を高めたいRSAグループと、日本市場での経営基盤の拡充を狙うAIGグループの思惑がするもとで進められた。これにより、RSAグループは売却価格9200万ポンド(180億円弱)を、AIGグループは年間約110億円の保険収入を手にする(プレスリリースによる。RSAI、TLA日本支社の年間収保は合計で約130億円)。RSAグループの日本での事業は危機とはいえず、保険契約移転により契約者保護をはかるべき緊急性はまったくない。行政に対しても経営は将来的な収益目標を報告していたと伝えられ、事業を投げ出すとは誰もが思っていなかった。法的手続きは保険業法上の包括移転として進められるが、その実態は、損害保険の社会的役割、企業の社会的責任とは無縁な「資本の論理」むきだしの事業の切り売りに他ならない。
(2) 最初に"首切りありき"の冷酷さ
 事業売却の交渉は、契約交渉の当初から従業員の雇用を承継しないことを前提にしたという。また、英国証券取引所での守秘義務を口実に、発表まで雇用確保に向けた努力は何も行われていない。まさに事業売却を口実にした雇用の切り捨てといえ、わが国の判例法理(解雇せざるを得ない必然性、回避の努力、労働組合への説明義務などを求めた「整理解雇の4要件」)に照らしても本末転倒の態度である。代理店・契約者保護の観点からも、保険契約とともに労働契約も承継されることがもっとも理にかなっている。このような、最初に"首切りありき"の態度は到底許されるものではなく、RSAグループだけでなく、AIGグループの経営者も、従業員に対する雇用責任を尽くす責務がある。
(3) 損保産業をM&A競争に巻き込む危険性
 いま、急速なグローバル化のもとで、金融の再編「合理化」情勢が一段と深まっている。損保もその埒外になく、今後、内外資本があいまみえる競争がさらに激化する危険がある。今回のような事業の切り売りがまかりとおれば、損保産業は、M&A競争の舞台となり、社会的役割、従業員への雇用責任、真の消費者サービスと無縁な荒廃した産業に変わりかねない。したがって、この事業売却の行く末は、損保産業全体にかかわる問題であり、金融行政としても包括移転を安易に認可すべきではない。

<全損保の基本スタンス>
 R&S支部28名の仲間は、「首切りありきの事業譲渡は許さない」ことを旗頭に、ただちにたたかいに立ち上がっている。発表された「事業譲渡」には道理はない。仮にも進めるというのなら、経営者が従業員の雇用責任を100%果たすことが最低限の条件である。全損保は、組織をあげて支部とともにたたかい、あらゆる角度から経営の責任を追及していく。常任中央執行委員会(拡大)はその先頭に立ち、すべての全損保組合員のみなさんに、事態への理解とたたかいへの参加を訴える。


 2004年11月17日
全日本損害保険労働組合
常任中央執行委員会(拡大)





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